謝ったら裁判で負けるというのは本当か?
先日、『全開ガール』というドラマの中で弁護士役の新垣結衣が「アメリカでは謝罪すると、自分に落ち度がなくても裁判で負ける」って言ってたんですが、本当にそんなことあるのかなと思ったので、ちょっと調べてみました。
謝罪が裁判で証拠として採用されることは本当のようです。アメリカでは、過失の賠償を要求する場合、原告は(1)相手方の注意義務、(2)相手方の注意義務違反、(3)因果関係、(4)損害を全て立証する必要がありますが、被告が謝罪をしてしまうと、この(1)と(2)を原告は立証しなくていいことになり、無用なアドバンテージを与えてしまうことになる。ただ、現在アメリカの2/3の州では謝罪を裁判で証拠として採用することはできないと州法によって定められています。つまり多数派の州では、謝ったからといって、それが即不利な材料になるというわけではないのです。
今回参考にした論文記事の中でRobbennolt教授は、少なくとも民事訴訟において、謝罪が裁判の結果に与える影響を示した研究は存在しないとしています。また、この記事ではは謝罪がもたらす効用についても説明しています。加害者が謝罪することで、良好な人間関係を保つことができ、和解もしやすくなるし、全体的な訴訟の可能性は減るという研究結果が出ているそうです。ただ、弁護士には被害者、加害者とは別の利害があるので、弁護士が加害者に謝罪しないように働きかける可能性はあるという説明もなされています。
証拠の問題とは別に、もうひとつ考えるべきなのは過失相殺のことだと思います。アメリカにおける過失相殺は2通りあって、日本と同じように過失の度合いに応じて損害を配分するという方式と、被害者側に少しでも落ち度があった場合、加害者は過失を免除される方式です。つまり、たとえば被害者が2割ぐらい悪かった場合、前者の方式だと損害100万円のうち80万円はもらえるのですが、後者の方式だと一銭ももらえないということです。もし謝罪によってちょっとだけでも悪いことを認めてしまうと、後者の方式の場合、かなりまずいことになる。後者の方式はアメリカでの伝統的な過失相殺だったのですが、現在採用しているのは5つの州のみです。
アメリカの場合、さらに厄介なのは、どこの州で裁判をするか、どこの州法に基づいて裁判をするかが、裁判を始めてみるまでわからないことです。確かに2/3の州では謝罪を証拠として採用してはいけないのかもしれないが、それなら他の州で裁判すれば済む話です。もちろん、どこの州で裁判ができるかには制限がありますが、事実関係や原告、被告のプロフィールがはっきりするまでは、誰も確証は持てない。それなら、「とりあえず謝るのはやめておけ」と言ってあげるのが弁護士の役目でしょう。
アメリカでは謝ったら絶対に負けるというのは言い過ぎですが、謝るのはとりあえずやめといた方が無難というのは本当かもしれません。
[出典]
Jennifer K. Robbennolt, Apologies and Settlement, http://aja.ncsc.dni.us/publications/courtrv/cr45-3/CR45-3Robbennolt.pdf
追記:
それにしても新垣結衣はカワイイ☆

